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連続小説「sailboat and my life」第11話 海の生活  最終回

ここに来てかれこれ丸二年が経つ

それにしても偶然とはいえ不思議である。私がニューベリーポートのピザ屋アンカーを紹介しなければハナさんとは会わなかったのだ。そして八五郎さんとも。

私が出入りしていたポートランドのヨシの店、兄が造船所を売却しようとしていたこと、私の爺さんのエドヤーズとエドガーの違い

そして私も子供の頃に乗ったことがあったセールボート、HANA

まさかHANAがハナさんのHANAとは誰もわからなかった。造船場を処分する事にしても、この船だけは売りに出さなかったこと。すべてが偶然とは思えなかった。

私がここまでHANAを回航してくるとは、人生とは不思議なものである。あの日、造船所でHANAを見かけたときのハナさんの涙は今でも鮮明に覚えている。私が受け継いで乗るだけで良かったはずのことが、この場所にハナさんと八五郎さんの二人のボートハウスにどうしてもこの船を返したくなったのだ。

HANAは本来この海にあるものだからなのだ。ふと気が付くと私はこの町から出れなくなっていた。船を整備すればそれですべてが終わり我が家に帰れるはずだったのに。仕事まで辞めてしまい。家族とも別れ離れになってしまい。気が付くとここが私の暮らしになってしまったのだ。

船に関するもの以外はすべて処分した。今あるものは冷蔵庫とレンジ、無駄に広いベッドと八五郎さんの雪駄と古びたラジオと私だけなのだ。日本の習慣で49日、一年忌、そして3回忌とあるそうだ。

今後のことは何も考えていないが、もう都会には戻れない。えまりと二人の娘と暮らしたくないわけではないが、えまりがクリスマスにやってくる。その時に私は何かの決断をしなければならない。海をとるのか?家族をとるのかを?

そしてクリスマスの日を迎えた。町はずれの港の近くにリズのバーがある。リズはハーバード大学で教鞭をとっていた美人で、爺さん思いの優しい娘だ。リズの爺さんは右手が動かせなくなってバーボンロックが作れなくなった。

そんな爺さんの後を引き継ぐ為に、リズは大学をやめてこの田舎の島にやって来たのだ。

今日ここには寂しい野郎どもが、リズの明るい笑顔を見にやってくる。えまりとこの店で待ち合わせをした。店が開く一時間も前にみんなは揃い、リズのかたずけや掃除の手伝いビール片手にカウンターから窓やドアーまで拭き掃除がはじまると、古びた分厚い木製のドアーのきしむ音がしてドアーが開いた。そしてそれは笑顔のえまりだった。

大きな旅行鞄を3個も持ってきてみんなに一言告げた。

「大変、遅くなりました。これから皆様にお世話になります、えまりと申します。末永く宜しくお願いします」

-完-

感想

大変長いお付き合い誠にありがとうございました。ふと気が付くと都会の暮らしを捨てて海で暮らす、ただのダメな男の話です。都会には大きな暮らしがあってお金があってそこに憧れを抱く多くの人々がいます。

マイクは全く逆でしかも無責任で家族を置き去りにしてしまいました。海の魅力に取りつかれて都会を離れるようになった訳でもなく、ハナさんと八五郎さんとの思いがすべての生活感を消してしまい惰性で海で暮らす人になったのです。

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