
【アメリカ A to Z】と題して、A~Zまでの頭文字で一つずつ、アメリカのモノ、ブランド、人物などをご紹介しています。「アメリカ」「アメカジ」好き親父の嗜好の強い内容となっておりますが、今回は、P、Q、Rについて書いてみたいと思う。
目次
- 「P」Pea coat(ピーコート)
- 「Q」Quaterback(クォーターバック)
- 「R」Rockmount Ranchwear(ロックマウントランチウェアー)
- まとめ
「P」P coat
Pea coatとは本来アメリカではないのだが、アメカジアイテムの中では外せない必須アイテムである。男の服装とは本来は 「機能"が優先」、でなくてはならない。つまり歴史的な意味を持つものは、必ずそこに戦いの歴史があるのである。
pea coatもその例外ではない。トレンチコート、デザートブーツ、カーゴパンツ、ポケットTシャツ等すべてが軍物である。アメリカAtoZのPは当然誰もがPolo brandを想像したと思うが、計りにかけたらどちらが重いかを考えると、やはりPea coatになった。
その歴史はかなり古く18~19世紀と言われている。もちろん軍人だけの物ではなく、漁師や帆船で働く船乗り全般の物でもあるのだ。
ちなみにフランスのブルターニュ地方では、漁師の人達が同様の物をよく着ている。

実際のところ由来もはっきりはしていない。一般的なイメージから捉えると、アメリカ海軍が愛用していて、そして今でもそのスタイルは変わっていないという所であろう。
歴史書から言わせれば、Peaだから豆であろうとも考えられるが、どうもピンと来ない。米軍の前に英国軍が愛用していたという説もるし、ほぼ同時期と言う説もある。がやはり英国ファーストだと思う。
Pはパイロットと言う説もあるが、飛行機よりも船の方が歴史は古いので、空よりは海の方が有力ではないかと私は思う。

そして説の中にはこんなオランダ語までが登場してくる。「Pij jekker」 英語表記にしてみると「Pea jacket」かなり似ているのではないだろうか。
オランダ語ではピーヤッケルと呼び、厚い毛織物上着と訳される。つまり英国軍がこのPeajacketに錨のボタンを付けて海軍用に使用したと考えると、それらしく聞こえるが、これは私個人の想像に過ぎないので、真に受けないでほしい。
ただ別の説で、peaは "錨の爪"の意味を持つらしいので、まんざらでもないのかもしれない。

私が仕事をしているマサチューセッツ州のWOBURNの近く、BOSTONの空港からかなり近い所には、アメリカ政府おかかえのピーコートを生産している会社がある。
US.NAVY、COASTGARD、US.MARINE CORPS、US.ARMYなどの軍人の為に、24時間体制で生産しているのである。
EAST BOSTONにある「STERLINGWEAR社」の営業のトップのジャックフォスターさんに話を聴いた事があるが、昔からの手法をほとんど変えずに生産しているそうだ。


ピーコートに似ているリーファージャケットとも呼ばれるものは士官が着るもので、肩の部分にエポーレットと呼ばれる憲章が付き、丈が少し長くなるのだ。
一般的なものは、丈も短めで艦上で作業しやすいようになっている。ボタンは風の向きによって右前にも左前にも出来るようになっているのが特徴である。
ボタンは6個と8個のタイプがある。ポケットはストレートもしくは少しだけスラントしているものに分けられる。
何故にポケットがこの位置なのかと言うと、寒いときには手を入れてハンドウォーマーにするが、作業が開始するときなどや船上で緊急を要するときには直ぐに作業にかかりやすい為だそうだ。
ポケットが大きいのは、グローブをはめていても安易に出し入れできるからなのである。
表のメルトン地も、時代が変化することによって軽量化が進んでいる。ファッション的には「軽くて着やすい」が現在の傾向だ。

現在の物は少しもの足りなく感じるほど軽く柔らかいのだが、きちんとインナーがキルティングされていて、ポリエステルの綿が入っているので軽いけれども暖かいのだ。
画像の物は一般的な素材の物で現代の物である。本来のピーコートは厚手の生地でウールのオイルが抜けきってないものを使用している。
その為かなり生地は分厚くて重く、匂いのあるものもある。一年や二年でくたびれてしまう様なヤワな生地ではないのだ。
オイルが抜けていないということは、羊毛を処理するときに生地の仕様を考え、あえて簡単に処理しているのだ。それにより撥水性を持ち、密度を保つことにより断熱も出来るのである。
現在も昔の生地にこだわるヴィンテージものを愛するファンも多くいるが、皆さんも是非一枚は持っていて欲しい「アメカジ必須アイテム」なのである。
「Q」Quaterback
アメリカAtoZでQを考えていて、一番初めにでてきたのが「Quaterback」だ。
え~?それ何?ブランド?コーヒー屋さん? と誰でも同様の質問をするであろう。
Qであればクイックシルバーとかあるじゃん!とか言われそうであるが。アメカジ・アイビー=クイックシルバーはありえない。
クォーターバックと言えば一度は聞いたことがあるのではなかろうか?クォーターバックとはアメリカンフットボールの司令塔のことである。
アメリカンフットボールは、アメリカの国技であって、その司令塔となれば、これは立派なアメリカを代表するものである。


ここで少しだけアメフトの解説。
もともとはフットボールと呼ばれてるだけあって、いわゆるサッカーが源流でサッカーで試合をやる派とラグビーでやる派があって、どちらも大学同士で試合をするようになったのだが、のちにラグビー派が人気になってルールの改正が何度も繰り返され現在のアメリカンフットボールになったのだ。

ラグビー選手として活躍していたウォルターキャンプ、彼の呼びかけにより現在のルールの基本が出来た。そして現在の形式で初めて行われた試合は1874年のハーバード大学とマギー大学戦であった。
1880年にはラグビースタイルのスクラムからスクリメージに変更になり、より現在のアメフトスタイルになった。そしてセンターからクォーターバックにスナップされて攻撃が始まるスタイルになるのである。
さて本題に戻るがここでクォーターバックの説明を長々とする気は初めからなく、クォーターバックのポジションがアメリカで出来た、いわゆる「made in USA」である事を言いたかったのである。それでは話はこれで終わりかと言うとそうではない。クォーターバックは花形中の花形なのである。
有名な選手と言えばトロイ・エイクマン(ダラスカウボーイズ)、ジョー・モンタナ(フォーティーナイナーズ)、ペイトン・マニング(デンバーブロンコス)そして、トム・ブレディー(タンパベイ)。
私がいるボストンのペイトリオッツの大スター選手でクウォーターバック2000年から2019年までボストン、ニューイングランド・ペイトリオッツでプレーして、その後タンパベイに移籍した。

なんかいつの間にか話がトムブレディーに変わりそうな雰囲気だな~。。。
そう、バレバレですね。じつはクォーターバックの説明と言うよりも、クォーターバックと言えばトム・ブレディーが代名詞なのだ。
もちろんアメリカンフットボールといえばアイビー、アメカジスタイル好きの方にはなくてはならないスポーツなのだが、このトムブレディーという選手が、どれだけすごい選手なのかを書いておきたかったのだ。

アメリカンフットボールでは、ワンパスを出すクォーターバックの力量で試合が決まると言っても過言ではないのだ。現在アメリカのスポーツ界の中でマイケルジョーダンを抜く史上最高の選手と評価されているのである。
2000年のドラフトでは全く無名で、6巡目の全体で199位でペイトリオッツから指名を受けた。2年目から先発に定着するやいなや、チームをスーパーボウル制覇にまで導いた。
彼はサンフランシスコに近いサンマテオで生まれ、当時は少年野球をやっていて日本で交流試合も経験している。フットボールプレーヤーよりは野球選手としての方が有名であった。
1995年にはMLBのエクスポズから捕手として18巡目で、ドラフト指名を受けてている。
ミシガン大学に入学すると7番目のQBであった。なんとか卒業までにはレギュラーのポジションをとるのだが、彼の評価は低かった。小さい、細い、遅い、強肩でもない、すべて合格点をもらえずだったが、ボストンだけは選んでくれた。
彼には運も味方をした。2001年の9月23日、ニューヨークジェッツ戦でついに大きな転機が訪れるのである。試合には負けるが、ペイトリオッツ王朝の時代がこの時からやって来るのであった。

ボストンはこの頃、野球も強くなりとにかく盛り上がっていた。レッドソックスファンも野球のシーズンが終わるとフットボールを皆が応援した。あの頃はセルティックスも強くなりバスケットも凄いことになっていてボストン中が大騒ぎ、あとはアイスホッケーだけだと言わていたが、そのブルーインズも久しぶりの絶好調であった。
そして、2020年までその勢いが続きペイトリオッツは負けを知らなかった。彼が入団してから負け越したシーズンは一度もなく同年にコーチとして就任したビルベリチックとともに王朝は築きあげられたのだ。
QBとしてリーグ最多となる17度の地区優勝、10度のカンファレンス制覇、7度のスーパーボウル制覇と5度のスーパーボウルMVP獲得、そして2度のリーグ最優秀攻撃選手に選ばれている。
その後、彼はタンパベイに移籍する。44歳になっていた。"もう引退である" とか "もう限界" などと世間からの囁きが聞こえだし、TVでも、今現在アメリカで誰もが気にしていることは、誰が大統領になるとかではなく、ブレディーは今後どうするのか?だと言われた。
彼は最下位チームであったタンパベイの移籍を希望した。そんな情報を聞き出すと、以前のチームメイトが引退したはずなのにまた現役復帰をしたのだ。タイトエンドのロブグロンコウスキーである。

そして彼らはやってのけたのだ。最終的にタンパベイは11勝5敗と地区二位で13年ぶりのプレーオフに進出。ブレディー自身は12シーズン連続のプレーオフ出場ながら初めてのワイルドカードでの出場となった。
そしてNFCチャンピオンシップゲームでグリーンベイ・パッカーズを31−26で破り、チームを18年振りに2度目のスーパーボウルに導いたのだ。
スーパーボウルではカンザスを破り、5度目のスーパーボウルMVPを獲得した。AFCとNFC両カンファレンスから勝ち上がってスーパーボウルを制した初のQBとなったのだ。43歳と188日でのスーパーボウル先発QBとスーパーボウルMVPの獲得は史上最年長記録である。

2021年シーズン第4週では、かつての本拠地のジレットスタジアムで、古巣のペイトリオッツと対戦した。そしてこの試合でバッカニアーズは19-17で勝利、彼ははQBとして史上4人目となる全32チームから勝利したのだった。
いわゆる、アメリカの英雄の一人なのである。
「R」Rockmount Ranchwear
はたしてこのネーミングを聞いたことがある人はいるだろうか?? ほとんどの方々が知らないはずである。
アメリカのファッションを語るには必ず登場しなければならないものがある。しかしながら現在はあまりアメカジ好きな方でも触れてこない分野がある。それはウェスタンである。
その昔カントリーソングを聞くものや、フォークソングを歌うものは、必ずや少しは触れたことがあるウェスタンファッション。
いや俺は、フォークでもモダンフォークだから、ブラザースフォーやキングストントリオだからウェスタンファッションではなく、アイビーファッションだと言われると完全にお手上げである。

アメリカの歴史にはかならずカウボーイの歴史がある。パパジャックは1946年にロックマウント ランチウェアを設立させた。彼は世界で最も古いCEOであり、107歳まで毎日働いていた。
全米最大の展示会でもパパジャックと何度か話をしたことがあるが、凄く素敵な爺さんだった。ロックマウントには歴史があり、それはスミソニアン博物館であったりオートリー博物館で展示されている。
パパジャックは言っていた。私たちはカウボーイスタイルを販売しているのではなく、カウボーイの心やロマンスを提供しているのだと。
ラスベガスの展示ブースの奥のパイプ椅子にずっしりと座り、語ってくれたことが今も心に残っている。商売の話はスティーブに聞けと。スティーブは3代目で世界中のバイヤーと繋がっている。

ロックマウントのファンは世界中にいる。しかも有名人にも愛されている。エルビスプレスリー、エリッククラプトン、ボブディラン、ロバートレッドフォード、ジョージルーカス、ジョニーデップ、ウィーリーネルソンにジョンレノン、先ほど登場したトムブレディーまでもが愛用者である。
書き出せばきりがなくなってくる。映画やコンサートなどでウェスタンシャツが登場すればほぼロックマウントではないだろうか?

それほどアメリカの顔なのだ。彼らの製品には何か独特のアメリカを感じるのだ。古臭いのだけれども嫌いではない。かといって最高でもなく、なんとなく当たり前のように身の回りにあることが嬉しいようなアイテムなのだ。
それがバンダナであったりフリースのブランケットであっても、どこかMadein USAを感じるのだ。

彼らがファミリービジネスをきちんと継承している事はもちろんなのだが、日本では考えられない安定的なウェスタンスタイル、ある意味これは日本でいう着物の感覚なのか?どんなに時代が変わってもその世界観はかならず受け継がれるのである。
その時代時代に合わせるコーデの違いはもちろんあるだろうし、受け取り方も当然世代が変われば大きく違ってくるはずなのに、安定したファンがいることは日本でいう法被や着物や風呂敷の感覚なのかもしれない。

最近凄くお気に入りのバンダナ。絵の中の彼女たちにもぞっこなのだが、彼女たちが履いているウェスタンブーツを眺めているだけで幸せを感じてしまう。
アメリカの展示会に戻れないため彼らとも二年間会っていない。でもスティーブに合うと商品の事は4代目に聞けと言う。ベルト、ジャケット、シャツ、ハットすべてのアメリカを紹介してくれるロックマウントランチウェアー。
毎年彼らの企画を、とても嬉しく思う。
まとめ
今回は「ピーコート」に「クォーターバック」に「ロックマウントランチウェアー」でした。
どれもがアメリカ人が認めるものであります。アメカジ好きであれば、ウェスタンシャツよりもワークシャツが好みなのは良く理解できるが、アメリカを知ることがアメカジを好きになる事の始まりなのではなかろうか?
ピーコートは似合う似合わないに関係なく、絶対に持っていてもらいたい必須アイテムである。軍物、サープラスものとして捉えるのではなく、歴史を知ってそして普通に着てもらいたい。
なかにシェットランドのセーターやフィッシャーマンセーターを合わせても良し、セントジェームスやルミノアのようなフレンチ風なボーダーのコーデでも良し、グレーの無地のスウェットでも良し、アイビースタイルでも良し、とにかくコーデを楽しんで欲しい。
翌日のコーデをジャケットを合わせながら考えてみてはどうだろう?ウェスタンスタイルが難しいようであれば、バンダナだけでもアメリカを感じてみてはいかがであろうか。
また今回も長い文章にお付き合い頂き、ありがとうございます。YouTubeなどもやっておりますので、是非そちらも宜しくお願いします。