1962年7月14日公開 若大将こと田沼雄一は京南大学マラソン部に所属、もちろんキャプテンで大飯食らい。全日本大学マラソンにむけて毎日毎日練習に明け暮れる日々を送っていた。
マネージャーはいつもの江口。江口は親から勘当されて仕送りがストップで、にっちっもさっちも行かない。
このままだと大学を辞めなければならない。そこで江口は田沼に相談、住み込みで働かせて欲しいと無理やりお願いをする。
頼まれるとイヤとは言えない若大将は、久太郎(田沼の父)とリキ(田沼のおばあちゃん)に紹介する。江口もちゃっかりしていて、若大将に住み込みのバイトを世話してもらったにもかかわらず、クラブは辞めると言い出し、かわりのマネージャーに石山新次郎を紹介する。
石山は自分からは言い出せないくせに、陸上部のマネージャーをやりたがる。大学にスポーツカーで通学するのも凄すぎて、開いた口がふさがらなくなるが、青大将だと嫌みに感じないのが不思議なのだ。
石山は根っからの金持ちなのだ。この当時はまだまだ学生服の時代で、体育会の学生はほぼ学生服を着ている。
そんな中で浮いてはいるのだが、不思議とカッコ良く見える。でも笑えるのだ。
毎回同じ登場の青大将こと石山(田中邦衛)は、お洒落で、スポーツカーを乗りこなす、いつも通りのボンボン役を今回も隙きなく演じる。アイビーと言うよりはコンポラファッション。
若大将は銀座に用事があり、石山の車で向かう途中に、スポーツ店に勤務する中里澄子(通称すみちゃん)が、雷族に絡まれている所に出くわす。
毎度の事であるが、若大将が正義の拳を振り上げる。この映画の決まったパターンなのだが、何度見てもやっぱり痛快である。
私が子供の頃もそうであったが、何度も若大将シリーズを観ていると、ストーリーが同じなので子供でも予想できたし、安心してストーリーを楽しむ事が出来る。
良く見ると、ペンシルストライプのボタンダウンシャツ。いったいどこのブランドなのか? VANなのか、JUNなのかは分からない。
この時代のボタンダウンシャツなので、少しインチキっぽいが、物のない時代のボタンダウンシャツであるので、当時は貴重であったことには間違いない。
この映画はとにかく楽しい。ありえないと言えばありえないのだが、何かに困っても何とかなってしまう。
今の時代背景とは全く違い、逆転ストーリーがどこにでもあり得そうなほど高度成長の時代である。
澄子がメトロスポーツの店員で、店で作ったクルーザーの代金が回収不能になり、そこに青大将が一枚かむことになる。
代金はパパに頼んで何とかすると豪語していたが、予定が外れ、逆に金の使い込みがばれて勘当になり、青大将までもが田能久に居候することになる。
青大将があてにならなくなったため、今度は若大将が父、久太郎に遺産の前借を申し込むが、門前払いになる。
当たり前と言えば当たり前なのだが、それを聞いていた祖母りきが、江戸っ子の心意気をみせる。
孫には甘い孫バカばあちゃんなのだが、そんなところもこの映画の見どころである。りきは銀行の口座から200万円を久太郎に無断でおろす。
一方、妹の照子にはお見合いの話があがり、この時代の約束事なのかもしれないが、親が決めたことであれば簡単にNOとは言えないのだ。
照子も江口に好意を持っていたのだが、お見合いに行ってしまう。
江口は照子にぞっこんだった為、かなりへこんでしまう。
そんな話を聞いて若大将と青大将が、お見合いをぶち壊しにする計画をたて実行する。若大将は勘当になり、青大将も追い出されマラソン部の合宿へ行くが、これまた無計画の石山のミスで、合宿の食い物はなくなり、金を稼ぐ計画をたてる。予算がないのでボートに宿泊することになる。
とにかく楽観的と言えば聞こえがよいが、あまりにも無計画、水上スキーのコンテストで優勝したりもするが、賞金ではなくて携帯用のテレビ。金なし食い物なしの合宿生活だったが、近くにおばあちゃんの友人の住職がいて、そこを合宿所にして練習再開になる。
左卜全が演じる和尚がまた最高に面白い。寺の中に布団をひいて合宿所とする。左卜全が演じる坊さんの役は、まさに実際にいそうなとぼけた坊さんで、とにかく笑える。
寺の部屋ですき焼きをやっているシーンだが、ボーダーのTシャツはきっとVANではないかなと連想してしまう。そのあとはいつもの澄子の気持ちがふらふら、そこに付け込む青大将、さらに悪の赤マムシが登場。
澄子は騙され強姦されそうになって、それを助けようとする青大将だが逆にやられて若大将に助けられるが、要領の悪い若大将は澄子とはいつもうまくいかない。
赤マムシと青大将、どっちもどっちだが悪の血で染まってるのは赤マムシ、どのシリーズにも登場していたはずである。
青大将が着こなすボタンダウンシャツは、ロンドンストライプに見える。この時代はたしかオックスフォードの生地のものが普及してなくて、毎回同じパターンであるが最後はマラソンも勝ってあっぱれあっぱれなのだ。
なかなかIVYの話をするほどの着こなしやアイテムがこの頃は登場しないが、IVYスタイル、IVYファッションが世の中の若者たちに影響を与えていくことをなんとなく想像できる。
若大将のアイビー姿は今一つだが、青大将のアイビースタイルにやられた先輩達も多かったのではなかろうか?
次回は「ハワイの若大将」のアイビースタイルにご期待ください。