1962年2月公開、若大将シリーズ第2弾、「大学の若大将」に続き杉江敏男氏が監督し、観客動員260万人のヒットを記録した。
今回も京南大学の学生、拳闘部のマネージャーの江口が引き起こした喧嘩に巻き込まれて、父親の友人のレストランをめちゃくちゃにしてしまい、そんなことが原因でレストランで働きボクシング部にも在籍することになる。
授業シーンから始まり、若大将は学ラン姿で青大将はジャケットにネクタイ姿。授業中に腹が減って弁当を食べてるところを、青大将にチクられる。
教壇に立つ教授は左卜全(ひだりぼくぜん)さんで、とぼけた演技が最高に面白い。授業が終わって新聞部の女の子に付き合い、銀座のレストランに広告をもらいに出かけるがここで、城東大学の拳闘部と一戦交えてしまう。
若大将の強さを見せつけられた拳闘部員が、若大将の家「田能久」に監督の左卜全と挨拶に行くが当人は留守。そこでおばあちゃんのリキさんがすっかりおだてられて、本人の許可なく拳闘部に入部するはめになる。
その辺のめちゃくちゃなストーリーが、毎回の事ではあるが笑ってしまう。ありえない様な事でもあるのだが、なんとなく当時の下町のおばあちゃんであれば、ありえそうな話でもある。
そんな話を聞く若大将も若大将で、おばあちゃんの顔が立たなくなる様な事を言われると、つい渋々やってしまうのがまたこの映画のバカバカしさでもあるのだが、それを分かって観ている我々は凄く楽しいのだ。
さて拳闘部に入部して直ぐなのに、なかなか動きも様になっていて、スウェットの上下も決まってる。京南大学のこの何の変哲もない「KYONAN」のゴシック文字がすごくかっこ良く、今見ても新鮮である。
マネージャー役の江口もなかなか決まっている。今のボクシング部のイメージは決してアイビー風には感じないが、この時代のボクシングスタイルはとてもアイビー的なスポーツに見えるのが不思議だ。
今ではヴィンテージと呼ばれるような肉厚のヘビーなスウェットがとにかくカッコ良い。東京の町中を二人で走る姿は100%アイビーな感じがする。メルトン地のグランドコートをさりげなく着こなすマネージャーの江口、その隣でロードワークする若大将、なかなか絵になっている。
昭和のほうがすべてにカッコ良く思えるのは私だけではないと思う。若大将の横に見えるサックスブルーの車なんか、今でも走っていればアイビーカーと呼びたい。ボタンダウンシャツ姿はこの映画でも見ることはなかったが、IVY風な感じに見えるものは少しずつ出てくる。
青大将に関して言えば、アイビーファッションと言うよりはもっと上の上級な着こなしを見せている。中里澄子、通称すみちゃんが働く洋裁店では、オーダーメイドでジャケットを仮縫いしていて、よく見るととてもアイビー風なジャケットである。
大柄のオーバーペインのウールのジャケットは、3つボタンの二つ掛け、センターベンツ、3パッチポケットのアイビージャケットで、胸にワッペンを付けてほしいと注文する。髪型は、バリバリのクルーカットだ。
とにかく青大将のスタイリストが誰だったのか、気になるところだ。とにかく群を抜いて決まっている。今ふと思うと、当時まだ学生達がようやくオシャレをする頃に、アイビー的な格好をする方々は、青大将のようなお坊ちゃん達が多かったのではないかと思う。
昔から金持ちと貧乏人とでは持ち物が違っていた事は理解できるし、経験もしているが、これだけ差があるのは時代を表しているのかもしれない。まだまだ物が少ない時代だったのだ。
今でこそ金持ちも貧乏人も離れてみればよくわからないが、この時代は遠く離れていても直ぐに分かるくらい、ファッションや素材に違いを感じた。
洋裁店で澄ちゃんが青大将にデートに誘われるが、澄ちゃんは青大将に、身分の違いが洋服の生地にある様な発言をしている。
万座スキー場でのファッションなんかも、とにかく今でもカッコ良いと評価できる。ホテルで澄ちゃんに襲い掛かる時の青大将のファッションはセーター姿にスカーフである。
帰りのバスのシーンのネイビーのジャケットは、今でいうパタゴニアのレトロエックスのような生地だが、この時代はフリースではなくてウールなので、きっとポーランドウールだと思われる。
よく見てみると左袖にワッペンが付いている。どこの物なのかは全くわからないが、この感覚はイタリアの高級アウトドアーメーカーのパジャーのような雰囲気だ。
ストーリーはいつものごとく誤解されることが多く、若大将はみんなに好かれるのだがその反面、もてすぎて信用を失うような所もある。これも毎度の事である。今回は澄ちゃんのほかにも同級生の京子、妹・照子の友人でファッションモデルのきみこにも言い寄られる。
さらにレストランノースポールの社長の娘と結婚させられそうにはなるし、澄ちゃんからは信用を失うのである。これは焼きもちも入っているため、複雑で馬鹿馬鹿しいのだが、そんな所も笑える所である。
最後は城東大学に勝って、めでたしめでたし。
若大将は常にカッコ良いのだが、とにかく天然で適当、だからこそ楽しい映画なのかもしれない。なかなか今回もアイビー映画にふさわしいファッションはあまり登場しなかったが、ネイビーブレザーらしいものが少しだけ登場した。
当時の学生たちは貧乏なはずなのに、みんなでお揃いのブレザー姿には驚きだ。決してカッコ良くはないけれど、アイビーファッションが身近になってきている事が、少しずつうかがえたと思う。
次回は「日本一の若大将」であるが、さて若大将とアイビーファッションがテーマのこのブログ、次回はどんな内容になるのお楽しみに。最後までお付き合いありがとうございます。