
How about "IVY"
アメリカにアイビーファッションは存在するのだろうか?もし、答えを出すのであれば、『 今は「YES」、昔は「NO」。ある意味「YES」で、ある意味「NO」』 こんな、回答が正しいのでは、ないだろうか?何故かというと、” アイビーファッション ” は、逆輸入ファッションだからである。
目次
- アイビーファッションは、アメトラである。
- アイビーリーガーは、アイビーファッションじゃなかった?
- 日本はアイビー、アメリカはプレッピー。
- ファッションとしての「プレッピー」。
- アイビーとプレッピーは、中身は同じである。
- 今、アイビーファッションは、存在する。
アイビーファッションは、アメトラである。
アメトラとは、”アメトラ” とか "トラッド” などと、主にブリティッシュトラッドをアメリカらしく合理的に改善された、東海岸発祥の伝統的な装いのファッションの事を指している。
アメカジとトラッドとの合わせたもの、そんな表現する方もいる。全部間違いではないような気がする。AMETORAとして本も出てるので興味のある方は是非読んではいかがだろうか?
アメトラ( トラッド)については、国柄や歴史的な背景が広く関係しており、ココにふれると長くなるので、割愛させて頂き本項へ。

今の時代は少し違ってきていると思うが、アイビーリーガーは、裕福な家庭で高学歴、親もアイビーリーグ卒の所謂エリート集団の学生が大半であった。
そんな彼らは意識してアイビーファッションをしていたわけではなく、それは代々受け継がれてきた装いであり、要するに ”トラディッショナル” なスタイル。アメトラである。
そもそもアイビーという言葉が、本国アメリカでも少々浸透したのがここ十数年という最近の話である。

1965年に初版発行された、『TAKE IVY』が、2010年にアメリカの出版社による英語版が発行される。その前年の2009年のニューヨークタイムズ紙で、この本を"a treasure of fashion insiders"「ファッション関係者の宝」と呼び、この本が数多くの男性ファッション・デザイナーに大きな影響を与えた、という記事がある。
アイビーリーガーは、アイビーファッションじゃなかった?
この「アイビーファッション」というネーミングは、VANの創業者石津謙介さんの業であり、アメリカでファッション用語として認識され始めたのは、ごくごく最近。前項で書いたようにたったの十数年前の事。
私がアメリカにいる際、ときたまアイビーリーグ校を訪れていますが、現役のアイビーリーガー達の中に、我々の知るアイビーファッションの姿はない。実際に学生たちにアイビーを問いかけても、よっぽどのファッション好き以外には、知るものもいないのではないであろうか?

日本であれば、「すごいアイビーだな、若いのにすげ~な~」や「あの人バリバリのアイビーだな!」なんて会話もどこかで聞くことが出来るかもしれないが、アメリカではありえないであろう。
つまり、日本の「アイビーファッション」=「アイビーリーグ」という式は成り立たないのである。
アイビーに憧れ、追いかけた青春を過ごした私のような人間にとってはすごく寂しい時代になった。と思うかもしれないが、当時日本で大流行した際も、"アイビーと言えば!"ボタンダウンシャツや、ぺニーローファーなどもアイビーリーガーだけが着ていたわけではないであろうし、皆がそんな恰好であったわけでもないと思う。

今はどこにでも登場する襟にボタンが付いたシャツ、その昔は襟にボタンが付いたシャツを学校で着ることも禁止の時代があったのだ。そのため学校では襟のボタンを外して先生に対抗したなどの話も聞いたことがある。

今よりも圧倒的に多く、アメトラなエリート集団が多くいたはずである。そして、今の時代にもゼロではない。オールドアイビー風かも知れないが。
アメリカではその後、学生達の着こなしは変化していった。しかし日本のアイビーはこの変化を伝えず、独自に切り開いていった。
その為、今に生きるアイビーを築いた素晴らしい功績と、現実との大幅なギャップ、そして ”プレッピー=アイビーの弟分”という公式が生まれたのである。
日本はアイビー、アメリカはプレッピー?
アメリカで見つけたものを編集して日本の若者にうえつけた日本独自のアイビーファッションが世界で認められているが、本国アメリカでは『プレッピー』をテーマにしたブランドがメインなのかもしれない。
それもそのはずである、アイビーはアイビーリーグに通うエリート大学生のファッションという、テーマのもとに造られた日本独自のもので、本国アメリカにとっては代々受け継がれる”アメトラ” なのだから。
アイビーと密接な関係をもつ、プレッピーも語らずにはいられない。

プレッピー(プレップ)とは?
プレッピーとは、アイビーリーグなど著名大学に入るための予備校の事。この名門私立高校をプレパラトリースクールと呼ぶのですが、これを略してプレップ、プレッピーというのが語源。
プレップスクールは、英国の全寮制学校を手本にしているところも多く厳格な躾けられる。また全寮制という点で、必然的に裕福な家庭でなくては入学ができない。
圧倒的に授業料が高いこと、いいとこの倅や娘が圧倒的であること。日本では全寮制の進学校はあまり聞いたことがない。

ファッションとしての「プレッピー」。
アイビー予備軍のプレッピー達のファッションは、アイビーの”弟分的なファッション”として、日本に広められた。アイビーの流行の20年ほど先になる。
比較的地味めな色が多くかっちりと正統派に着こなすアイビーに対して ⇔ 派手な色を好みネクタイを外し着崩したスタイルがプレッピーだと。
でも、実質はそうでなはかった。
実際このプレッピーが日本に伝えられるまでの20年という年月の間に、本国アメリカ内では次第に変化しアイビーリーガーもまた変化していた。一番の要因は心境の変化である。
~1960年代は、アイビーリーグというエリート名門校に通っているという誇りやプライドを持ち、スクールロゴ入りのセーターや正統派のスタイルを身に纏う事が ”ステータス”であった。

その後、アメリカでは「カウンターカルチャー」と呼ばれる対抗文化が起きた。学生など若い世代たちは文化的慣習に反するようになり、60年代にあったアイビーリーガーという一種のステータスが、「エリート家系のおぼっちゃま」と見られるようになっていくことに反骨心を抱いた。
日本のバンカラ精神に似た、わざと不良っぽくネクタイを緩めたり、ボロボロのローファーを履いたりと心境と共に、着こなしも変化していったのである。
プレッピースタイルを提案していたブランドと言えば、RALPH LAURENから2004~2013年ころまで展開されていた「 RUGBY 」が記憶に新しい。日本でも人気を博したが、惜しまれながらも閉鎖なった。
アイビーとプレッピーは、その実、中身は同じである。
アメリカのこの変化の期間をなくして、新たにプレッピーと紹介されたのであるから、「プレッピー=アイビーの弟分」という、公式を誰もがなんなく受け入れた。
紹介された時代 (60年代と80年代)、紹介されたフィルター (アイビー=アイビーリーグに通う学生。プレッピー=プレップに通う学生。) が違った事により、ごくごく自然であった。
もし、時が遅れ、80年代にアイビーが紹介されていたのであれば、今、皆が知るプレッピーがアイビーになっていたであるに違いない。
というわけで、アイビーもプレッピーもアメトラである。その違いは、時代背景に密接し、由緒正しく着るか着崩して着るかの違いに過ぎない。

今、アイビーファッションは、存在する。
以上の事を踏まえた点で、アイビーファッションは『 今は「YES」、昔は「NO」。ある意味「YES」である意味「NO」』であると思います。
日本からの逆輸入で今は存在する ”アイビー”は、 "アメトラ” の一角であり、アイビーファッションという言葉を知らずして、アイビーリーガーである事に誇りを持ち、スクールロゴやスクールカラーを身に纏っていた学生たちは、誰が何を言おうとアイビーファッションのお手本なのである。
